アルツハイマー型認知症が原因で死亡したのに死因として算定されにくい実態が明らかになってきています。死を招く病気ですが、これまでは肺炎などアルツハイマーが引き起こした別の疾患による死亡と医師が認定することが多くなっています。国内の認知症患者数は、直近の2012年調査では462万人に達していますが、死因としては2千人弱しか記録されていません。認知症患者では、うまく飲み込めなかった食事や唾液が細菌を伴って肺に入ることで発症する誤えん性肺炎が起こりやすく、死因として記載されることが多くなっています。肺炎死には認知症による寝たきり患者が相当数含まれていると思われます。欧米では診断時に余命宣告がなされるなど、以前から致死性の病と認識されています。
日本では、重症化すると歩行や飲み込む動作が困難になるなどの疾患の重さが十分に理解されていません。偏見も根強く、直接の死因として扱わない傾向にあります。アルツハイマー型認知症は、発症の原因がはっきりせず病因は不明です。ケア体制の整備や治療法確立に向けた検証データの集積のためにも、死因として認定され疾患への啓発を進める必要があります。
(2017年10月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)