障害のある人も障害のない人もともに学ぶインクルーシブ教育という考え方が、学校で広まりつつあります。国際社会と歩調を合わせ、日本でも少しずつ進展してきています。インクルーシブ教育とは、障害の有無などによって学ぶ場や環境を分けられることなく、一人ひとりの能力や苦手さと向き合いながら、共に学ぶ教育を指します。2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」にその考えが盛り込まれています。日本では、2012年に文部科学省がインクルーシブ教育の方向性を打ち出し、障害のある子の就学手続きも2013年に改めました。
特別支援学校や小中学校の特別支援学級に在籍する子が増えています。多くの人が、みんなが一緒に学ぶことの大切さを頭では分かっていますが、実際には特別なケアが必要だからと分けてしまっています。実際に特別支援学級の少人数での手厚い教育の方が、きちんと子どもをみてもらえて、成績を上げるにも進学にもかえっていいのではという保護者もいます。人の多様性を認め、尊重しあうために、分ける、分けないの議論の前に、通常学級の学びを問い直すことが大切だと考えます。
(2019年4月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)