厚生労働省は、1月21~27日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数が1医療機関当たり57.09人だったと発表しました。昨シーズンのピークだった54.33人を上回り、1999年の調査開始以来、最多となっています。全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は推計約222万6千人で前週を約10万人上回っています。今シーズンの患者数を押し上げている要因は、A型の2タイプのウイルスが同時流行していることによります。2009年に新型インフルエンザとして流行したA型の一つH1N1型とA香港型です。直近の5週間でのウイルス検出状況では、この2ウイルスでほぼ全部を占めています。
予防投与とは、インフルエンザの集団感染などを防ぐため、発症していない人に抗インフルエンザ薬を投与する措置です。原則として感染者と共同生活している高齢者や家族を対象に、治療に使う半分の量を倍の期間投与します。公的医療保険は適用されず、費用は自己負担となります。国内でインフルエンザの予防投与が承認されている薬は、タミフル、リレンザ、イナビル、タミフル後発薬の4種で、2018年発売のゾフルーザも予防投与の効果を確かめる臨床試験が進んでいます。
インフルエンザの集団感染対策として有効とされる予防投与の遅れが高齢者施設などで目立っています。未発症の人に治療薬を使うことで感染リスクを抑える手法です。しかし、職員の経験不足や病院との連携が不十分などの課題があります。高齢者への予防投与は効果的ですが、実施するかどうかを迅速に判断するには、相応の知見や体制が必要です。職員間で感染症の知識を深め、いざという時に地域の医療機関と協力できる仕組みを整えることが重要です。
(2019年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)