厚生労働省によれば、全国に約500ある基幹定点医療機関から報告された1月6~12日のインフルエンザの入院者数は、減少に転じています。約5千ある定点医療機関あたりの感染者数も35.02人で、先月23~29日の64.39人から減っていますが、4週連続で警報レベルとなる30.00人を超えています。特に子どもでは、命に関わるインフルエンザ脳症への注意が必要となります。
インフルエンザ脳症は、意識障害や痙攣、異常行動が表れます。インフルエンザの発症後、2日以内に起こりやすいとされています。脳症になると死亡率は7~8%、回復しても運動機能の障害などの後遺症が生じる可能性が25%ほどあるとされています。5歳未満に特に多いのですが、学齢期の子どもも発症することがあります。
一時的な症状なのか、脳症なのかの判別は難しく、専門性の高い医師に早く診てもらう必要があります。呼びかけや刺激に反応がないなどの意識障害のほか、異常な興奮状態や、全身を痛がる、自分の手を噛むなどの異常行動が表れることもあり、インフルエンザの療養中は注意して見守る必要があります。
脳症になるのを完全に防げるわけではありませんが、ワクチン接種がリスクの低につながります。ワクチンは、一定程度インフルエンザの罹患を予防します。発症する人を一定数減らすということは、脳症になる人を減らす効果もあります。インフルエンザは3月頃まで流行が予想されるので、今からの接種でも遅くありません。子どもに解熱剤を使う時は、脳症の悪化リスクとの関連が指摘されている非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は避け、アセトアミノフェン系の薬を使うことが大切です。
(2024年1月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)