細胞が分泌する微粒子であるエクソソームを使う自由診療が問題となっています。エクソソームは、近年動物や細胞の実験で組織や臓器の炎症を抑えたり修復したりする報告が相次ぎ、研究が盛んになっています。イノベーションへの期待は高く、呼吸不全や糖尿病など様々な病気の患者に投与し、安全性や効果を調べる臨床試験が各国で進んでいます。しかし、現状では治験で科学的に治療効果を確認し、承認されたものはありません。

動物で効果があったとしても人での効果は約束されていません。エクソソームの中には様々な成分があり、その影響は未解明な部分が多く、副作用のリスクもあります。厚生労働省は、2024年7月にエクソソームの効果をうたう広告を出す販売業者の取り締まりを自治体に働きかける通知を出しています。クリニックでは、エクソソームを業者から試薬として購入し、患者に投与する例があります。エクソソームは先端医療との関係が深く、iPS細胞と組み合わせた関連事業も登場しています。
日本再生医療学会は、2024年12月にiPS細胞の培養液を利用したエクソソームをアンチエイジングなどの目的で提供する事例が増えたことから、期待される効果は、科学的根拠に基づいていないと注意喚起をしています。iPS細胞やエクソソームといった先端技術のキーワードには、患者の期待を誘う面があります。

国内で流通する24製品を調べると、十分な量のエクソソームを含むのは4品目にとどまっています。米国では、エクソソーム製品の投与で重い感染症が起きています。細胞を投与する治療法は、培養に問題があると感染症のリスクがあるため、再生医療等安全性確保法で規制されています。

(2025年3月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)