エンゲル係数とは、消費支出に占める飲食費の割合を示します。戦後長く生活水準の指標とされ、低いほど水準が高いとされてきました。日本では、終戦後は60%を超えていましたが、高度成長を経て1970年代後半には20%台後半になりました。その後も下がり続けていましたが、2005年の22.9%(2人以上の世帯)を底に上昇に転じ、2016年は25.8%に上昇しています。
生活水準や貧困の尺度として一定の参考になりますが、エンゲルの時代ほどの役割はないとする学者もいます。しかし、エンゲル係数は基本的には時代や国を超えて成り立つ普遍的な法則といってよいと思います。エンゲル係数を5つの所得階級別にみると、2017年は最も高い層で22.1%、最も低い層で30.6%になります。低所得者ほど高い傾向ははっきり出ており、最近10年間で高所得層との差は広がっています。
(2018年5月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)