エンゲージメント指標とは、従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互い成長し合い、絆を深める関係にある度合いを示すものです。言われたことを忠実にこなす受け身の真面目さではなく、改善や新機軸に、主体的、意欲的に取り組む姿勢を指します。
このエンゲージメントの国際比較調査を米IBMなどが実施していますが、日本はどの調査でも最下位近辺にあります。自ら発案しない社員の集合体では、生産性は高まらず、目を見張るようなイノベーションも生まれません。エンゲージメントの低い組織は、欠勤率や労災の発生率、法令違反といった負の事象が増えるとされています。
ソーシャルキャピタルなどの言葉が生まれています。知識や人と人の結びつきが、企業活動の基盤という発想です。それに続いて登場したのが、マインドキャピタル、つまり心の資本という考え方です。自分は幸福だと感じている人は、そうでない人より仕事の生産性が高く、創造性は3倍になることが分かっています。成功が幸福を招くのではなく、幸福だと感じることが成功を生むとされています。
社員の心の状態が仕事ぶりに直結し、企業業績にも少なからず影響を及ぼします。働き手の心の資本の総和は、会社の盛衰を左右します。
(2019年7月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)