米国で、麻薬鎮痛剤であるオピオイド乱用による死者の増加が止まりません。2021年の犠牲者は約10万人に達し、過去の薬物問題をはるかに上回っています。当初は処方薬による被害が広がり、処方規制後は致死性の高い違法オピオイドが、麻薬としてまん延する悪循環に陥っています。
オピオイド系の鎮痛薬は、各国で処方薬として承認され、がん患者らの痛みの緩和に使われています。OECDによれば、加盟25カ国の2014~2016年の処方数調査で、米国が人口100万人あたり3万8,218件と突出し、ドイツの2万6,350件、カナダの2万4,276件が続いています。100万人あたりの過剰摂取による死亡数は、米国の131人に対しドイツは9.5人にとどまっています。規制の違いが被害の差を生んでいます。処方管理が厳しい日本では大きな問題には至っていません。
(2022年10月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)