高齢者になると、噛めないものがある、飲み込みにくい、味がわかりにくい、口が乾く、といった口の機能のトラブルが増えてきます。口のまわりの些細な機能の低下が、体の衰えにつながります。オーラルフレイルが低栄養状態を招きます。歯が20本残っているか、噛む力が弱くないかなど、6つの口まわりのトラブルのうち、3つ以上満たす人は、該当しない人に比べて、死亡率が2倍、介護が必要になるリスクも2.4倍になります。
口の機能が低下すると噛まなくても済む柔らかい食事に偏り、食べる力がどんどん衰えてきます。食事のバリエーションも限られ、炭水化物や糖類が多くなり、たんぱく質の摂取量が減り、栄養摂取にまで影響を及ぼしていきます。これが口の機能が低下する負のスパイラルです。口の健康への評価が低い人は外出頻度も低く、認知機能も低くなります。また、口の渇きを訴える人は、うつ傾向や日常生活での自立度が低いといった特徴があります。
口の機能を鍛えるには、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ10回繰り返して発音すると良いとされています。フレイル予防では、むしろカロリーは積極的に摂取しなければなりません。噛み応えのある肉とか咀嚼する機能を維持できるものを積極的に食べるように心がけることです。息を吹き込むと巻かれた紙が伸びるおもちゃの吹き戻しを使えば、口の筋肉を鍛えられます。また、よくしゃべり、歌うことも唾液の分泌につながります。
(2018年3月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)