カスハラの増加

小売店などの店員が、お客さんからのひどい苦情や暴言に悩むカスタマーハラスメント(カスハラ)が増えています。暴言、脅迫、長時間の拘束、同じ苦情の繰り返しなどです。サービス業などの労組でつくるUAゼンセンの調査によれば、直近2年以内に迷惑行為の被害を受けた人は56.7%もいます。カスハラが増えたと感じる人は46.5%と、減ったの3.3%を大きく上回っています。
被害を受けた人は、小売り、飲食、娯楽、生活サービス業などに多く、消費者の身近な場で起こっています。もともとサービス業の現場は、非正規雇用のスタッフが多く、組織に被害を訴えにくい面がありました。近年はフリーランスや単発で仕事を受けるギグワーカーが、被害を受ける例が増え、現場も個人宅などへと広がっています。
増えた理由としては、手軽に情報発信できる携帯端末の普及や、飲食店を客が評価する口コミサイトの登場によって、お店への中傷は広がりやすくなりました。孤独な中高年の増加も背景にありそうです。ストレスを発散するのは、社会的な階層の高い人に多いそうです。こうしたところへ新型コロナウイルスの流行が重なり、人々のストレスや不安が一気に高まりました。
カスハラは従業員の心の健康を損ない、職場の士気を下げてしまいます。人材確保が難しくなり、サービス低下も招くことになります。現場の負担を減らすため、クレームの窓口を設ける企業も増えています。駅員への暴力に悩む鉄道会社は、ポスターでの啓発を続けています。一方、消費者団体はカスハラ防止策が行き過ぎ、消費者が企業にクレームや意見を言いにくくなることを懸念しています。

(2021年10月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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