ガラスの天井とはglass ceilingの訳です。組織の中で昇進すべき人々が、性別や人種などを理由に昇進できず、低い地位に甘んじていることを示しています。不当な理由によりキャリアアップできない状態を、見えない天井になぞらえた比喩です。マイノリティや女性に対する見えないが打ち破れない障壁という意味です。もっぱら女性の企業内における昇進や意志決定の場への登用を阻害する場合に用いられることが多くなっています。
政府は女性活躍推進を訴えて就労を促す一方、少子化対策として出生率の向上を図っています。しかし、現実には20代女性の結婚願望が薄れています。交際経験がない人が増え、結婚したい相手に巡り会えていないと感じる女性が多くなっています。いろいろな分野で女性の社会進出が進み、結婚よりも仕事のキャリアを大切にしたいという女性の増加も背景にあります。キャリアアップを図る女性はガラスに阻まれ、専業主婦でいようとすれば女性活躍といって働くべきですと言われます。働こうとすれば、待機児童問題で子どもを預けることさえできません。このような状況では、結婚して子どもを作りたいと思う女性が減るのは当たり前かもしれません。これは女性の社会に対する一種のレジスタンスかもしれません。
ヒラリー・クリントンの言葉を想い出します。「私たちは、いまだ最も高く、硬いガラスの天井を破ることができていません。でもいつか、誰かが成し遂げてくれるでしょう。私たちが思うより早く、そんな日が来てほしい」
(2016年11月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)