キャリアブレイクとは、離職や休職など仕事の一時的な中断を肯定的に捉える考え方です。育児や介護といった家庭の事情のみならず、自身の働き方を振り返り、リスキリングに挑むなど、いったん立ち止まる理由は多種多様です。こうした行動を成長の機会と考え、制度として取り入れる職場も出始めています。
休職や離職によるキャリアの断絶は、依然として女性に多い傾向にあります。総務省の2017年の就業構造基本調査によれば、5年間で出産・育児のために前職を離職した人は102万5千人いて、そのほとんどが女性でした。1年間で介護・看護のために離職した9万9千人いて、女性が8割ほどを占めていました。
働き手自身が休職・離職したいと考えても、自分にプラスになる確信が持てず、決断をためらうケースは少なくありません。一時的でも仕事から離れる不安や疎外感、周囲に受け入れられない懸念に加え、生活のための収入の心配といった背景もあります。休んでから復職を急ぐ人もいます。キャリアブレイクは欧州を中心に広がってきた考え方です。ベルギーでは育児や介護に関する休暇の制度とは別に、理由を問わない長期の休職や時短勤務が認められています。一方、終身雇用が一般的だった日本では、休職や離職はキャリアのブランクと捉えられ、昇進や再就職に不利に働く場合が多いとされてきました。
人生100年時代と呼ばれる現代は働き方が多様化しています。雇用側も変化対応力がある人を求める時代です。離職中の活動も経験として、自分の生き方をデザインできていると評価されるようになってきています。キャリアの中断は、性別関係なく起こりうる問題だからこそ、ブランクとして捉えるのではなく、ブレイク(休暇)と捉える必要があります。キャリアというものを人生全体で考えれば、休職・離職中の時間も空白期間ではないはずです。
(2022年11月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)