終身雇用や年功賃金などの影響が残る日本では、働き手のキャリア意識が低いとされています。リクルートらの調査によれば、将来のキャリア形成のため実施していることがないという比率が、日本は30.5%と断トツに高くなっています。米国は2.2%、中国も3.1%でした。
職場内でのキャリアパスに対しても、考えたことはないという回答が日本では43.7%に達し、2位の韓国の20.7%の2倍強に達しています。同じ会社でずっと働く就社を前提とし、配置転換を企業が主導しています。そのため、働き手は計画的なキャリア形成を考えなくなってしまいます。労働市場での自身の価値やキャリアを意識して就職する機会を奪ってきた側面があります。
結果としてリスキリングも低調になります。仕事をしていくうえで、学びやリスキリングが必要と思う回答は、日本が70.9%と11カ国中4番目に高いのですが、実際に取り組んでいる時間となると週1時間未満が42.5%と最も多く、全体の最下位です。
多くの企業で働き手のキャリア自律を促し、企業の成長と両立させる動きが活発になっています。職務を明確にして将来のキャリア計画を描きやすいジョブ型雇用の導入が必要となります。転職時に職位が上がって賃金も上昇する健全な雇用の流動が日本にも求められます。
(2024年10月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)