米国や中国を中心に、野菜や家畜などの遺伝情報を狙い通りに改変するゲノム編集技術を使った新品種の開発競争が始まっています。これまで遺伝子操作による品種改良は、多額の費用がかかるため、世界的な大企業の独断場でした。しかし、簡易なゲノム編集技術CRISPR-Cas9が2012年に登場するや、ゲノム編集作物が爆発的な広がりをみせています。
欧州でゲノム編集作物を法規制する動きがある一方、米中などの種苗大手は、商品化に本腰を入れています。ゲノム編集作物が、食卓に並ぶ日はそう遠くはないと思われます。世界的な食糧不足や気候変動を背景に、バイオ技術を使った品種改良で覇権を掴もうとする動きもあります。日本政府も、ゲノム編集作物の規制などのルール作りを急いでいます。国内では、既に血圧上昇を抑える成分に富むトマトや肉厚のマダイなど、付加価値の高い商品の開発が進んでいます。
(2018年12月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)