こども家庭庁が発表した2025年4月1日時点の待機児童数は、全国で2,254人と過去最少となりました。しかし、都市部では、限られたエリアで突如待機児童が急増するゲリラ型が目立つようになっています。手ごろな住宅地に子育て世代が流入するためで、住宅高騰や責任不在の都市政策の余波が待機児童問題に及んでいます。
自治体が待機児童を解消できない理由に、想定以上の申し込み増加や保育需要の地域偏在が挙がっています。特に大きな影響を与えるのはマンションの建設です。その制御はできていません。国土交通省と厚生労働省は、大規模マンションの計画段階から自治体の都市開発部門と保育部門が連携し、マンション開発事業者に保育園の設置を促すとの通達を出しています。しかし、強制力や報告の義務はありません。
マンション事業者に対し、容積率の緩和と引き換えに保育園整備を義務付けるなど、国は実効性のある対策を打つべきです。都市部では潜在ニーズが大きい一方で、少子化が進み保育園が余る懸念も残っています。都市開発行政と保育行政、官民と民の垣根を越えた支援が求められます。

(2025年9月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)