ゲーム時間と学力との関係

ゲームと学力の関係に関する調査に多くは、プレー時間が長い子どもの成績は悪いという結果が出ています。しかし、多くの調査は平日のプレー時間を調べており、選択肢は0、1、2時間と1時間単位です。平日に2時間もゲームをすれば勉強時間が確保できず、成績が下がるのは当然です。もう一つの問題は、当事者の子ども自身に聞いていたことです。日常的に親からゲームのやり過ぎを責められている子どもは、匿名の調査でもプレー時間を正直に答えたくないという思いに駆られ、正確な調査結果が出ない恐れがあります。さらに長期の影響が分からないことです。
慶應義塾大学の田中教授らは、高校受験を経験した15~69歳の約1万4千人を対象に、中学時代にどれくらいゲームをしたかを思い出して答えてもらい、その人の高校進学実績と比較する形での調査をしています。平日のプレー時間は1時間以下が6割を占める一方、2時間以上というヘビーユーザーも3割いました。
さらに、プレー時間と偏差値60以上の高校進学率の割合を調べています。ゲームをしなかった人と比べると、15分、30分と答えた人の進学率のほうが高く、1時間でもわずかに上回っています。つまり、平日のプレー時間が1時間までなら、受験への悪影響を心配しなくていいと言えます。一方、プレー時間が3時間以上の人たちは進学率の低下が顕著で、長時間のゲームが悪影響を及ぼすことも確認されました。
もっとゲームをしたいという誘惑を断ち切り、プレー時間を1時間以内に抑えられる子は、自らを管理する力が備わっているので、受験の合格という目的に向かっても自己管理ができているのかもしれません。ゲームについて、自分で決めたルールがあったと答えた人の進学実績が良かったことが、この仮説を裏づけています。家族と決めたルールがあったと答えた人の進学実績は上がっていないので、本人が自律的に決めることが重要です。つまり自分で決めたルールは守るということです。守らなければペナルティーがあってもいいと思います。ゲームは自己管理能力を養うためのツールだと考えるべきです。

(2021年7月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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