コロナウイルスによる集団免疫獲得

ウイルス感染は、そのウイルスに対する免疫を持たない人に感染することにより流行します。ウイルスに対して、人口の一定割合以上の人が、感染やワクチン接種により免疫を持つと、感染者が出ても他の人に感染しにくくなることで、感染の流行が抑えられます。間接的に免疫を持たない人も感染から守られることになります。この状態を集団免疫と言います。

ワクチンには、接種した本人を感染症の発症や重症化から守る効果が期待されています。さらにウイルスに感染すること自体を防げば、接種率が高まることで流行が収まっていきます。接種していない人も間接的に守られる集団免疫が、新型コロナウイルス感染症においても期待されています。新型コロナの場合、最も初期の分析から試算すると、少なくとも人口の6~7割の接種率が必要と考えられていました。しかし、感染力の強い変異株の出現で、集団免疫獲得のためにはさらに高い接種率が必要になるかもしれません。
1日あたりの感染者数が1月のピーク時に6万人を超えた英国では、接種を1回でも終えた人が人口の約6割を超えています。しかし、いったん2千人台になった1日の感染者数が、6月下旬には再び2万人を超えています。変異株の影響や、接種した人の感染予防が緩んだ可能性なども指摘されますが、そもそも集団免疫の成立が難しい可能性も示しています。ワクチンで重症化を防げるようになりますが、集団免疫の予測は難しいと考えられています。
感染抑制の効果を得るためには、感染を広げやすい人に接種が進むことも重要です。国内のワクチン接種は、医療従事者から始まり、65歳以上の高齢者へと広がっています。6月に入って職場などでの接種も始まりましたが、感染者の多くを占める若い世代にワクチンが行き渡る時期は分からず、集団免疫の実現が見通せない状況です。

(2021年6月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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