コロナ対策16兆円の検証

財務省の発表によれば、政府は新型コロナウイルス感染症に関する医療政策として、約16兆円を投じてきています。16兆円の主な内訳は、医療機関への病床確保料や慰労金に約6.8兆円、ワクチン購入や医療者への接種補助に4.7兆円、治療薬購入に1.3兆円、ワクチンや薬の開発・生産支援に1.3兆円となっています。IMFの報告によれば、日本はGDP比でみたコロナ関連の財政支出が世界の中でも突出して多くなっています。
支出額の見直しの余地が大きいのは、入院患者のためにベッドを空けておくと支払われる空床補償など、医療機関への補助金です。補助金は、受診控えなどによる病院の経営難を支えました。医療経済実態調査によれば、2020年度に一般病院には、コロナ関連の補助金が平均2億3,700万円支払われています。本来は赤字だったところ、一施設あたり平均1,300万円の黒字になっています。
昨夏の第5波では、東京都の病床使用率は最高でも65%でしたが、感染者が入院できず自宅で亡くなる例が相次ぎました。補助金を受け取りながら稼働していない幽霊病床も問題視されました。病床確保などに6.8兆円をかけた一方、感染者の治療に対する診療報酬の加算は1千億円しかありません。医療機関に対して、感染者の治療に強いインセンティブを与える制度設計になっていませんでした。
病床確保に次いで支出額が大きいのがワクチン関連です。財務省のまとめによれば、2.4兆円をかけて8億8,200万回分を購入しています。英アストラゼネカ製が大量に余ったまま使用期限を迎えて廃棄され、今は米モデルナ製の廃棄が相次いでいます。今1日のワクチン接種回数はピーク時より少ないにもかかわらず、未だに接種1回あたりの平均3,700円を医療機関に支払っています。コロナもいずれ季節性インフルエンザと同じ扱いになるはずで、このまま巨額の財政支出を続けるべきではありません。

(2022年7月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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