新型コロナウイルス感染症の流行で、不要不急の外出は控えるよう呼びかけられています。感染しないことは大切ですが、体を動かさないことにより、高齢者で全身の筋肉が弱るサルコペニアが問題となっています。普段より体を動かさなくなると、1カ月でも筋肉量に影響が出ることがあります。サルコペニアは、ギリシア語で筋肉のサルコと、喪失のペニアを組み合わせた造語です。加齢や病気で全身の筋肉量が減り、筋力や体の機能が落ちることを指します。
サルコペニアになると、転んだり、骨折したりする危険性が高くなり、心身の活力が低下するフレイル(虚弱)や、介護が必要な状態につながりやすくなります。それだけでなく、心血管の病気やがんなどの病気になった時、サルコペニアだと死亡リスクが高いことや、認知機能の低下との関連も指摘されています。
日本サルコペニア・フレイル学会などがつくるサルコペニア診療ガイドラインによれば、ふくらはぎの周囲径や、握力などによって診断されます。握力が男性で28㎏、女性で18㎏未満か、手を体の前で組んで5回椅子から立ち座りを繰り返すのに12秒以上かかったら、サルコペニアの可能性ありとされています。
予防には食事による栄養に気をつけなければなりません。たんぱく質の多い魚や肉、卵などを積極的にとることが必要です。1日の目安は、体重(㎏)あたり、たんぱく質1gです。体重60㎏なら、60gです。積極的に階段を使うなど、活動量を減らさないことも大切です。スクワットや椅子に座って膝を曲げ伸ばしする運動は、特別な道具がなくてもできます。特に冬は日照量が減り、紫外線を浴びると体内でできるビタミンDが足りなくなりがちなので、散歩が勧められます。
(2021年3月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)