コロナ禍での呼吸管理

新型コロナウイルス感染症では、重篤例では呼吸障害が起こり、人工呼吸器や人工心肺装置であるECMOを装着するケースが増えていきました。米国チームの米国医師会雑誌であるJAMAの報告によれば、3月4日~4月4日に米国内の65医療機関に入院した患者2,215人のうち、1,859人が入院から14日目までに人工呼吸器を受け、733人が入院から28日以内に死亡したとされています。つまり、新型コロナ患者に人工呼吸器を使用しても、28日以内の死亡率は約4割に達しています。米国などでは人工呼吸器をつけた高齢者ほど死亡率が高いとの別の報告もあります。
わが国の発表でも、肺炎などで人工呼吸器を使った75歳以上の45人のうち、7割の32人が死亡し、13人が回復しましたが、11人は身体機能が低下して寝たきりになるなどしたとされています。日本集中治療医学会は、最も重篤な新型コロナ患者に使う人工心肺装置ECMOについて、治療効果が低いとの理由から、65~70歳以上は一般的に適応外としています。
日本老年医学会は、今年8月に提言を発表しています。治療や生き方について事前に家族や医師らと話し合って決めておくACP(アドバンス・ケア・プランニング)の意義を強調しています。特に人工呼吸器についても、医学的に有益でなければ、装着しないことが望ましいと本人や家族らに説明する、装着してみて、回復が望めなければ外す選択肢を家族に伝えることなどを医師に求めています。
家族らはできる限りの治療を希望することが多いのですが限界もあります。必要以上の治療は望ましくなく、むしろ弊害が生じる恐れもあります。しかし、少なくとも新型コロナ患者の意思が確認できない場合、虚弱な高齢者に対して人工呼吸器を装着すべきではないと思われます。

(2020年9月16日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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