コロナ禍での国内の臓器提供の減少

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、国内の臓器提供が減っています。昨年の亡くなった人からの提供は計78件で、コロナ流行直前の2019年と比べて約4割も少なくなっています。今年も過去10年で最少ペースです。臓器移植法の改正に伴い、2010年7月から本人の意思が確認できなくても家族の同意で提供できるようになりました。以降、脳死と判定された人からの提供は増え、心停止の提供は減る傾向にありました。
日本臓器移植ネットワークの集計によれば、近年の提供者数は脳死と心停止を合計して、年間80~100件ほどです。脳死の人からの方が摘出できる臓器の種類が多いため、移植件数は増えていく傾向にあります。コロナが流行する直前の2019年の提供は126件、うち脳死からは98件と、法改正前も含めていずれも過去最多でした。
しかし、新型コロナの流行が大きく影響し、2020年の提供は計78件で、2019年に比べて約4割も少なくなっています。新型コロナの感染者が増えた昨年12月には提供がありませんでした。2021年の提供数は10月末までに計59件に過ぎません。
心停止の人からの提供は、過去5年ほどは年間30件前後で推移していましたが、2020年は9件と激減しました。2021年も10月末までに7件となっています。臓器の摘出を担うのは集中治療や救急救命の現場ですが、ここは、新型コロナの重症患者の治療を主に担う部門です。面会も難しい状況のもとで、意思確認をして、臓器提供まで結びつけていく労力は大変なものです。中でも心停止からの提供は、いつで心臓が止まるのか時間が読みづらく、迅速な摘出手術が求められるなど、元々対応が難しいとされています。そこに新型コロナの流行が重なり、ドナーが感染していないことをPCR検査で確認する必要も新たに加わります。家族への臓器提供の選択肢を提案することが、より難しい状況でした。

(2021年11月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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