2020年以降は世界的な感染拡大に伴って、国際的な会議や展示会などの状況が一変しました。各国は感染を抑制しようと、渡航制限や都市封鎖といった措置を相次いで導入しました。国際会議協会(ICCA)の統計によれば、コロナ禍前の2019年に通常開催できた国際会議の数は、世界全体で1万3,269件に上っていましたが、2020年には9割超少ない763件にまで減少しました。
その後に広がったオンライン形式には、参加者の不満も多くなっています。商談会などのビジネスの場では、企業からオンラインだと新しい商談相手が見つけにくいといった声が相次いでいます。国と国の交渉でも、相手の国の外交官と面と向かって話さないと議論が広がらないという意見が出てきていました。このため、最近目立っているのは、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式です。
大規模な会合の開催形式には、対面、ハイブリッド、オンラインのいずれも長所・短所があります。オンライン形式では、コロナの感染リスクを下げるのはもちろん、参加者にとっては航空券やホテル代といった費用負担が少なくて済む利点があります。しかし、オンラインの参加者は、イベントの録画配信などがなければ、時差を気にする必要があります。主催者側が、各国の参加者の通信環境に配慮することも必要です。ハイブリッド形式では、実際の会場を確保しつつ、オンライン用の機材も用意しなければならないため、運営コストはかさみがちです。
コロナ禍で落ち込んだ経済の回復に向け、各国は様々なテーマを掲げて人を呼び込もうとしています。一度に大勢の訪問客が見込め、開催地に様々な恩恵をもたらすMICEは、大きな柱となっています。MICEとは、Meeting(会合)、Incentive tour(報奨旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition(展示会・見本市)/Event(イベント)の頭文字をとった造語です。地域への経済効果や、参加者の交流による新たなビジネス機会の創出などが期待されています。
(2022年7月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)