大企業が資本金を減らして形式的に中小企業となる事例が相次いでいます。資本金が1億円以下の場合、税制上は中小企業扱いで法人税の税率が低くなります。地方税の法人事業税を赤字でも支払う外形標準課税も対象外になります。
近年、目立つのは大企業が減資によって身の丈を縮める動きです。国税庁によれば、資本金1億円以上の企業は2011年度に約3万3千社ありました。2018年度には3万社に減っています。コロナ禍が直撃した2020年は、1億円以下への減資が上場企業だけで16社に上っています。
減資は、合法的な資本政策の一環で資金流出を防ぐ合理的な手でもあります。しかし、税の公平性の観点から問題視する声もあります。外形標準課税は、赤字企業も行政サービスを受けている分、納税すべきだとの考えもあります。収益力などにかかわらず資本金の区分で税負担が違うことが抜け穴となり、節税狙いの減資が可能になっています。
(2021年3月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)