厚生労働省のデータを使った日本経済新聞の独自集計によれば、10歳未満の2021年の外来受診は、コロナ発生前の2019年に比べて23.8%減っています。全世代平均の7.4%減、65歳以上70歳未満の15.0%減に対し、子どもの減少が目立っています。コロナ対策でマスク着用などが徹底され、インフルエンザなどの感染症が顕著に減少したことも関係しています。
子どもの受診率の低下には、低収入も大きく関係しています。低収入の世帯ほど仕事を簡単に休めず、子どもの未受診率が上がりやすくなっています。コロナ禍がこうした傾向に拍車をかけた恐れがあります。病院で子どもがコロナに感染したり検査で感染が判明したりすると、濃厚接触者となる親は外出できなくなってしまいます。収入が途絶えると恐れる人は多く、陽性になるとややこしいからPCR検査は受けないとする人もいます。
子どもの受診日数を健康保険別にみると、所得格差が明らかになります。健保には、大企業の社員などが入る組合健保や公務員などの共済組合、自営業者や非正規労働者らの市町村国保などがあります。未就学児の受診日数を比べると、市町村国保の子どもの受診は、2011年以後組合健保などより減少幅が月4~10ポイントほど大きくなっています。
加入者の平均所得は、組合健保の222万円、共済組合の245万円に対し、市町村国保は88万円です。市町村国保には、ひとり親やアルバイトなどで収入が不安定な人もいます。親の収入で子どもの健康管理に差が出る事態は防ぐ必要があります。
(2022年5月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)