コロナ禍での看護師不足

新型コロナウイルスの重症患者が増加の一途をたどっており、看護師不足が顕著になってきています。日本は人口あたりの看護師数は米国などと遜色はありません。しかし、病床数が多いことから、1病床あたりでみれば少なくなってしまいます。OECDによれば、1病床あたりの看護師数は、日本は0.6人と、米国の2.84人や英国の3.09人の5分の1程度にとどまっています。しかし、2018年で働く看護師は約150万人おり、毎年増加しています。
コロナ対応で看護師が不足するのは、人工呼吸器などを扱えるスキルが必要な上、感染不安や差別への懸念から対応を拒む人が後を絶たないからです。重症者を扱う集中治療室などは、通常の病床より医療スタッフが大量に必要なことも原因です。熟練した看護師を増やすには、研修や教育の機会拡充が必要です。資格があっても働いていない潜在看護師の活用も求められます。
東京都と大阪府で新型コロナの専用医療施設の運用が始まっています。医療資源を集約し逼迫を食い止める狙いですが、活用できる病床は多くはありません。スキルが高い看護師の確保の難しさが背景にあり、離職を防ぎつつ、柔軟に配置する仕組みづくりが欠かせません。
出産や育児が、待遇面などを理由に辞める看護師が多くなっています。2018年度の正規の看護師の離職率は10.7%に上っており、その後に復帰する人も一部にとどまっています。復職を促すには働きやすい環境づくりが欠かせません。

(2020年12月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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