コロナ禍での社用消費の変化

コロナ禍で国内消費は大きく減少しています。その一つが社用消費です。交際費には、取引先への接待や贈答、供応に伴う費用ですが、ピークは1992年で6兆2,000億円に達していました。バブル崩壊後はじりじりと減り続け、2008年のリーマン・ショック以降はピーク時の半分になりました。それでも近年は、企業業績の回復とともに交際費も増加に転じていました。
コロナ禍で不要不急の外出が減少し、交際費は減りましたが、今後も社用族が戻るとは考えにくい状況にあります。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出や宴会自粛で、領収書を経費で落とす機会もすっかり減ってしまいました。少なくとも居酒屋や接待を伴う飲食店の需要が、コロナ以前に戻ることはないと思われます。
スーツや化粧品もコロナ禍で激減し、市場の中身が変わりました。スーツの場合、居酒屋同様、カジュアル化で年々減少傾向にありました。今やユニクロやワークマンのほか、水道工事会社など新規参入組が低価格で提供する仕事着などに代替されつつあります。スーツがカジュアル衣料にシフトするように、ある程度私用族にシフトしていくと思われます。
コロナ禍で、外食やサービス業、百貨店など不要不急と言われる企業の負債が増え、財務体質を改善するには時間がかかります。交際費を使う社用族が戻ることは考えにくいと思われます。交際費を使わないまでも、会社仲間での飲み会やスーツ、化粧品などの購入といった会社のために消費する疑似・社用族も減少すると思われます。

(2021年6月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。