コロナ禍での経済格差の増大

新型コロナウイルスの危機は、低成長や富の偏在といった矛盾を広げ、世界に埋めがたい深い断層を刻みつつあります。スイスのUBSなどによれば、保有資産10億ドル以上の2千人余りの超富裕層は、この1年足らずで資産を200兆円増やしています。一方で、同じ地球に食べ物にも事欠く人が、コロナ前から6億9千万人います。飢える人々は、コロナでさらに1億3千万人増える恐れがあります。経済の二極化は、反エリート主義や大衆迎合主義と結びつき、宗教や人種、世代に断層を広げ、政治を不安定にしてしまいます。
モノの大量生産で繁栄した20世紀は、労働者が中間層に育ち、平等化が進みました。21世紀にかけてデジタル技術が広がると、モノではなく、データや知識を牛耳る巨大テック企業が、勝者総取りを競う時代になりました。そこをコロナ危機が襲いました。
各国の財政拡大と金融緩和が常態化し、あふれた資金が株価を押し上げています。持つ者と持たざる者の差は、さらに開くことになります。コロナ禍で、欧州の低所得層の比率は、4.9~14.5ポイント上がるとの予測もあります。OECDによると、最低所得層の子が中位の所得を得られるまで、平均4~5世代の時間がかかるとしています。

(2020年12月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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