多くの国が、感染対策と経済活動の両立を目指し、そのバランスに苦慮しています。中国はウイルスゼロを目指しています。武漢封鎖に象徴される強権的な措置は、結果として感染の拡大期を短く抑え込みました。米欧では連日、数万、数十万の新規感染者が出る中、中国本土の市中感染は9~11月の3カ月で無症状を含め500人に満たないとされています。政府の果断な対応は、問答無用の隔離や封鎖と隣り合わせという住民の緊張や忍耐、犠牲と表裏一体です。
10月中旬からの第2波の渦中にある欧州では、反ロックダウン(都市封鎖)デモが各地で起きています。死者数、感染者数とも世界最多の米国でも、保守派を中心に個人の活動の制限は自由の侵害だと考える人が多く、ICUが足りなくなったカリフォルニア州で、今月初めに自宅待機令が導入されると、反規制デモが起きています。
欧米と同じ自由民主主義で、個人の権利意識も高い南半球のオーストラリアは、感染が広がりやすいとされる冬を乗り切っています。PCR検査で陽性と分かった人には、州の感染追跡チームが24時間以内に連絡し、数日間の行動を詳しく聞き取り、判明した濃厚接触者にも、検査と自主隔離を求めています。対策はプライバシーに踏み込み、経済活動や移動の自由も制限しています。
日本は強制的な感染対策に慎重です。国民の自由と権利への制限は、必要最小限のものでなければならないとしています。モラル依存の手法は、防災目的の移動制限などでも使われており、リスクを認識し、それを避ける行動が一人ひとりに求められています。
中国との対立を抱え、民主主義が根づく台湾も感染の抑え込みに成功しています。緊急時に行政部門を横断する対策本部を設置でき、対策本部には民間の不動産や医療関連物資を徴用できる権限もあります。混乱の中で民間が動き、当局もそれを頼っています。民間には、危機の際に手を貸そうとする気持ちや、必要な能力を持つ人材がおり、行政が情報を開示し、民間に協力を求めています。公共交通機関などでは、マスクの着用を義務化し違反者には罰金も科しています。
(2020年12月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)