国際通貨基金(IMF)のデータによれば、コロナ禍での財政支出の規模(GDP比)が最も大きいのは米国です。次いで日本、カナダ、英国の順になっています。財政支出の真水の定義は、保健部門・非保健部門と税収減に、支出の前倒しと収益の繰り延べを加えた値です。国債発行などによって生じた政府債務を財源とするコロナ対策費の総計と言い換えられます。
超過死亡は、全ての疾患を原因とする平年の推計死亡数に比べ、実際の死亡数がどれだけ多いかを表します。G7での最悪は米国の20%で、次いで英国の19%、イタリアの17%、フランスの10%でした。唯一マイナスの日本は、平年よりも死亡者が少ないという逆説的な現象が生じています。死亡者という点でG7最優秀の日本は、財政支出が2番目に巨額だったというファクトが統計学的に裏付けられます。
これだけの財政支出の拡張路線をとったからには、その中身をコロナ治療体制の強化、感染増大の抑止、コロナ困窮者らへの支援などにどれだけ賢明に使ったか、検証が必要となります。例えば、コロナ重症患者の入院治療に備えるために、重点医療機関に指定した病院へ厚生労働省が支給する空床確保料です。集中治療室(ICU)などの1空床あたり1日数十万円を払っています。感染が収まった地域にはベッドを空けたまま、もらい続けている病院があります。こうした補助金は、病院の赤字補填に使用されているのが現状です。
(2021年6月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)