厚生労働省が2月25日に公表した2021年の出生数の速報値は84万2,897人です。前年から3万人近く減り、過去最少を更新しています。元々あった少子化の流れに、コロナ禍による出産控えの影響が加わったとみられています。この速報値には、日本に住む外国人などが含まれており、今後発表される日本在住の日本人の出生数の確定値は80万~81万人程度となる見通しです。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した日本の将来推計人口によれば、2021年の出生数は、最も実現の可能性が高いとされる中位推計で88万6,000人でした。実際の出生数が80万~81万人程度なら、推計より8万人近く下振れする見込みです。2031年の推計出生数の81万1,000人に近い水準で、コロナ禍で少子化のペースが10年早まったとも言えます。
日本では出産と強く結びついている婚姻数が、2021年は前年比4.3%減の51万4,242組で、戦後最少の水準にまで落ち込んでいます。コロナ禍で結婚を延期したり、結婚そのものを諦めたりするケースが相次いだと思われます。外出や会食の自粛で、出会いの機会が減っていることも大きいとされています。
2019年までの過去10年間の婚姻数のデータとの比較から、2020~2021年の2年間で約11万組の婚姻が失われたと推計されています。推計結果からは、将来生まれる子どもが15万~20万人少なくなる可能性があります。婚姻の先送りは第1子の誕生時期を遅らせ、第2子を産む人の減少にもつながります。
想定を上回る少子化は、将来の社会保障制度の支え手を減らし、負担と給付の前提を揺るがすことになります。国は少子化に少しでも歯止めをかけようと、子育てしやすい環境整備を中心に様々な対策を打ち出しています。育児・介護休業法の改正で、4月からは従業員に子どもが生まれる場合、企業には、育休制度の内容を説明し、本人または配偶者の取得の意向を確認することが義務付けられてます。幼児教育・保育の無償化や低所得世帯に向けた高等教育の無償化など、子育てや教育にかかる費用の軽減も図っています。
子ども関連の政策を一元的に担うこども家庭庁を、2023年4月にも設置する方針です。経済不安や子育て支援を受けにくい状況などから、結婚や出産に消極的な人が増えています。こども家庭庁を中心に、就労支援のほか、妊婦や子どもへの切れ目のない支援を強化して安心感を醸成し、家庭を築きやすい社会づくりを急ぐ必要があります。
(2022年3月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)