コロナ禍における集団免疫獲得

感染力の高いデルタ株の蔓延により、集団免疫の獲得が難しくなってきています。当初、新型コロナウイルス感染症に対する集団免疫は、60~70%の接種率で達成できる可能性があると試算されていました。集団免疫の獲得は、世界的大流行の収束につながると期待されていましたが、ワクチンだけでは限界が見えてきています。
従来株の約2倍の感染力があるとされるデルタ株が世界的に拡大し、イスラエルでは2回接種を終えた人が6割を超えていますが、再び感染者数が増えています。英国や米国も似たような状況にあります。デルタ株は、感染力の強い水疱瘡と同じくらい感染しやすいとされています。この場合、集団免疫に必要な接種率は8割以上となり、当初の想定より高くなります。問題は感染力だけではなく、ワクチンが効きにくい変異株が出てくれば、必要な接種率はさらに高くなります。
近年、ブレークスルー感染が問題になっています。日本でも2回接種後に感染した人は、7月中に少なくとも2千人あまり確認されています。ブレークスルー感染は一定の割合で起きます。ブレークスルー感染者が二次感染を引き起こし得ます。接種者が増えれば、その報告数は多くなるため、デルタ株の影響だけとは言い切れません。感染が拡大している現状では、接種を終えた人も引き続き感染対策が求められます。

 

(2021年9月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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