コロナ禍におけるK字経済の進展

米国や中国がけん引役となり世界経済が回復局面に入りつつあります。国ごとに改善スピードで差が出る一方、同じ国でも所得や雇用形態などで回復の恩恵は大きく異なっています。コロナ禍で富の集中が加速し、格差が固定化し、二極化を示すK字経済が問題視されています。
K字経済とは、富裕層と貧困層の経済格差など経済の二極化が進む状態です。所得階層別に収入や貯蓄の増減などをグラフ化すると、上下に開くK字を描くことから名付けられました。新型コロナウイルス禍が長期化するなか、低賃金労働者ほど雇用環境が悪化し、株高の恩恵を受ける富裕層に富が集中する現象が世界的に広がっています。

 

コロナ下では、学歴による経済格差も顕在化しています。国際労働機関などの統計によれば、主要国の就業者に占める大卒などの高学歴者の比率が高まる一方、中等教育しか履修していない人の比率は下がっています。産業界でも、好調な企業と落ち込みが続く企業との間で、業績の格差がK字化する傾向が出ています。

このようなK字経済の克服には、低所得者の底上げが必要です。カギを握るのは、リスキリング(学び直し)です。デジタル化の加速に伴う学歴や職種による就業機会の格差を防ぐには、働き手のスキル向上が欠かせません。職業訓練への公的支出が多い北欧の国々では、所得格差が小さくなっています。また、法人税率を再び引き上げ、富裕層向けのキャピタルゲイン課税なども強化することも必要になってきます。衰えていた税の所得再分配機能を修復することで、K字の開きに歯止めをかけをかけることも必要です。

(2021年5月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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