新型コロナウイルス感染症の重症化には、免疫が暴走するサイトカインストームがかかわっています。サイトカインは、細胞から分泌されるたんぱく質で、何らかの理由でサイトカインが増えすぎると、免疫が暴走し、正常な細胞が傷ついてしまいます。新型コロナのほか、細菌感染による敗血症や重症のやけどなどでも起こります。大阪大学などの研究チームは、PAI1というたんぱく質が血液中に増えることが、サイトカインストームの引き金になることをつきとめました。重症の新型コロナ患者7人でもPAI1が増え、血栓ができると、血管が傷ついて血液成分がもれだし、免疫が過剰に働いて、全身の炎症などを起こすと考えられています。
研究チームはヒトの血管細胞を免疫にかかわるサイトカインの一種、インターロイキン6(IL6)で刺激したところ、PAI1が増えることを実験で確認しています。PAI1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)は、血栓の融解を阻止するたんぱく質で、PAI1が増えると血栓ができやすくなります。リウマチの治療薬であるアクテムラにより、PAI1の増加が抑制されます。新型コロナウイルス感染で、IL6を早期に抑えれば、重症化を防ぐなど治療の効果が期待できるかもしれません。
(2020年8月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)