厚生労働省は、胎児が感染すると難聴や脳の障害などを引き起こす恐れのあるサイトメガロウイルスについて、感染の予防法や診断時の対応をまとめた医療機向けのマニュアルを作製しました。サイトメガロウイルスは、子供も含めた健康な人が感染しても、ほとんど体に悪影響はありません。ただ、ウイルス抗体がない女性が妊娠中に感染すれば、胎児の約4割が感染し、このうち約2割は聴力や脳に障害が出る恐れがあります。ウィルスは主に子供の唾液や尿などに多く潜んでいるとされ、妊婦は乳幼児の世話をしている際に感染するケ-スが多いとされています。
妊婦の約3割は抗体を持っておらず、現在はウィルスの感染を防ぐワクチンもありません。このため、研究班が作成したマニュアルは、医師や妊婦に対して感染予防策を提示しています。おむつ交換した後の頻繁な手洗いの実施や、子供と飲食物や食器・歯ブラシを共有しないことなどを挙げています。赤ちゃんのおよそ300人に1人に感染の恐れがあり、他の母子感染と比べても確率は高いとされています。しかし、サイトメガロウイルス母子感染に対して、多くの医師や妊婦がその危険性を認識しておらず、予防に向けた早急な対策が求められています。
(2015年2月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)