サバからマグロが

近畿大学は卵からふ化させて育てる完全養殖に成功し、育ったマグロが一部で市販されています。ただ、マグロは卵が大人になるまでに5年ほどかかるうえ、養殖に必要な体重約100キログラムの親のマグロを飼育する大きな専用施設も必要でした。このたび東京海洋大学は、クロマグロの卵と精子になる生殖細胞をサバに移植する実験に成功しました。今夏にも産卵して交配が可能になり、マグロの稚魚が誕生する見込みだそうです。

 クロマグロから生殖細胞を取り出して、サバのオスとメスの稚魚に移植しました。移植先のサバの稚魚はあらかじめサバの精子や卵を作らないように処理しておき、移植した生殖細胞がサバのオスの精巣やメスの卵巣に入り込み、その生殖細胞が体内で生きて増殖していることを確かめています。成熟するとサバのオスがマグロの精子を作り、メスがマグロの卵を産み、交配させれば、マグロの稚魚が生まれることになります。マグロの稚魚を量産できれば、稚魚を放流することで、天然のマグロの資源を増やすことに役立つと思われます。

(2015年1月24日 日本経済新聞夕刊)
(吉村 やすのり)

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