サービス産業における生産性向上

 日本の労働生産性は低いと言われて久しく、真面目で丁寧な仕事ぶりで知られる日本人の生産性はなぜ低いのでしょうか。日本生産性本部によれば、2023年の日本の時間あたり生産性は56.8ドルで、G7では最下位でラトビアやポーランドよりも低くなっています。労働生産性の分子は名目GDPなので、売り上げや付加価値の増加を伴わない生産性向上には限界があります。

 学習院大学の研究によれば、2020年の日本のサービス産業の生産性を100とした場合、米国の201.7やドイツの151.7など欧米諸国と大差がついています。例えば日本の宅配サービスでは時間を指定しても追加料金はかからず、正確な時間に荷物が届きます。しかしその分人員や労働時間は増えます。素晴らしいサービスでも、それに見合った対価を求めなければ生産性にはマイナスに寄与します。

 製造業の生産性にも課題はあります。品質の良いものを安く提供するのがメーカーの使命とする物づくりの哲学が世の中に根付いてしまっています。日本には、世界に誇る伝統工芸品やおもてなしの文化があります。ラグジュアリー産業に限らず、質の高い商品に適切な価格をつけることが必要になります。

 コストに対する販売価格の比率であるマークアップ率を高める努力はあらゆる企業で欠かせません。それが付加価値を生み、生産性向上の源泉になります。物価上昇が続く足元の経済情勢はそのチャンスとも言えます。

(2025年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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