シニア人材の利用

4月以降は改正高年齢者雇用安定法の施行で、70歳までの就業機会を確保するよう努力義務が企業に課せられます。企業は、施行後に定年制を廃止するか、定年を繰り上げるか、定年後に契約社員などで再雇用し、継続雇用を続けるかなどの対応を取る必要があります。改正法では、罰則規定のない努力義務にとどまっていますが、将来的に義務化される可能性があります。
厚生労働省の調査によれば、70歳以上が働ける制度を設けている企業数は5万1,633社で、全体の31.5%でした。前年同月比で2.6ポイント増えましたが、65歳までの雇用確保措置を設けている企業比率の99.9%と比べ、導入は限定的にとどまっています。慢性的な人材不足から、中小企業の32.1%の方が、大企業の26.1%よりもシニア人材の活用に熱心です。
改正法施行の背景には、少子化による労働力不足、高齢化に伴う社会保障費の増大があります。しかし、再雇用などで70歳まで働く人が増えた場合、企業の人件費は、2040年に65~69歳だけで、2019年比3割多い6.7兆円に膨らみます。企業の負担が増える中、シニア人材が持つ技能や経験を生かす環境づくりが急務になってきます。

 

(2021年2月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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