日本は、医薬品や原薬のサプライチェーンを海外に大きく依存しています。厚生労働省の調査によれば、2020年の医療用医薬品の国内生産は約8兆5,000億円です。このうち、主成分の半数以上が輸入品だったものは、5兆9,000億円と約7割を占めています。ジェネリック医薬品の調達先は、原薬では韓国と中国が2割以上を占めています。原薬の材料まで遡ると、中国が全体の半数近くでイタリア、インドが続いています。
日本政府は、2020年6月には海外依存度が高い原薬やその原材料の国産化を進めるため、設備投資の一部を支援する事業も始めています。公募では、塩野義製薬のグループ会社などの5事業が選ばれ、国内製造能力の強化に乗り出しています。指定した医薬品については、製造・販売業者に調達先の多角化や備蓄などを求め、特例融資などの支援も行います。
しかし、新たな対策に伴う仕入れや単価や人件費などの上昇は、医薬品価格に転嫁され、国民の医療費負担増につながる恐れもあります。医薬品の安定供給にはお金がかかることを、国民が理解しなければなりません。政府や製薬企業は欧米各国と連携し、医薬品の中国依存という共通課題の解決も探るべきです。
(2022年2月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)