政府は、企業の参入率と退出率が高いほど1人あたりの経済成長率が高くなるとの認識を踏まえて、スタートアップの育成に力を入れています。日本の開業率は4.4%にとどまり、米国の9.3%や英国の12.4%に見劣りしています。スタートアップを志す人材を増やすには、法律や税制などの制度面に加え、資金調達しやすい環境の整備が必要です。
内閣府によれば、スタートアップを含めたベンチャーへの投資額は、GDP比で0.08%にとどまり、シンガポールの2.61%や米国の0.64%を下回っています。国内の資金循環が不十分なだけでなく、海外のベンチャーキャピタル(VC)投資を呼び込めていません。
中小企業基盤整備機構や産業革新投資機構など、政府系の機関が出資枠を確保したり、ファンドを立ち上げたりするなど資金供給の多様化に乗り出しています。過去の実績を重視する銀行は、赤字が続くスタートアップへの融資には慎重ですが、新株を発行すれば創業者の持ち分が希薄化してしまいます。銀行融資の増加に期待する向きも少なくありません。
(2023年7月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)