採血なしに血糖値が分かるウエアラブル端末の開発競争が激しくなってきています。糖尿病の患者や予備軍が、日々の血糖値の変動に気づきやすくなり、生活習慣や服薬の改善につなげて重症化を防ぐのに役立ちます。糖尿病は、世界で約5億人が患っており、早期発見へのニーズは高まっています。米アップルや韓国サムスン電子など、IT大手が巨大市場への参入をうかがっています。
空気中の微小な粒子を電磁波で測定する技術で、血糖値の測定に応用が可能になります。アップルは、腕時計型端末であるアップルウオッチの健康管理機能を強化してきました。2018年12月に心電図の測定機能を搭載しました。1~2年以内にも血糖値測定に対応した機種を販売するとみられています。端末内蔵の発光ダイオード(LED)やレーザーで、手首の皮膚表面に光を当て、反射したり散乱したりした光を受光素子で受信します。その強さや波長を解析することで血糖値を導く仕組みです。
糖尿病患者は、これまで毎日のように指先に自ら針を刺して採血し、血糖値を測定する必要がありました。痛みや煩わしさが、きめ細かい血糖管理や治療継続の障壁ともなっていました。日々の血糖値を適切にコントロールできず、腎臓病などの合併症に至ってしまう患者は少なくありません。ウエアラブル端末を使えば、採血の痛みや煩わしさを感じることなく血糖値を常時把握できます。生活習慣や服薬量の最適化を通じた適切な治療が可能になります。
(2021年9月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)