質の高い医療の実現には、医師と患者が正しい情報を共有することが欠かせません。病院側の積極的な情報開示とともに、患者側も治療の決定プロセスに積極的に関わる姿勢が求められています。医療の実践にあたっては、医師が患者に診療内容を十分に説明し、同意を得るインフォ-ムドコンセントが基本です。患者の権利を求める動きにより、日本でも徐々に浸透し、1997年の医療法改正で理念が明確に規定されました。主治医と異なる医師に意見を求めるセカンドオピニオンは、2006年度の診療報酬改定で、主治医に紹介状を書いてもらう情報提供料が保険適用となりました。
厚生労働省の調査によると、セカンドオピニオンを利用したことのある患者はわずか22%です。ただ利用した患者の86%は、役に立ったと答えています。近年はセンカンドオピニオン外来を設置する医療機関も増加してきています。医療事故を繰り返さないためにも、いかに普及させていくかが今後の課題です。認知度が高まっている割には、セカンドオピニオンの利用者は少ないのが現状です。診療ではなく、相談扱いのために患者の自己負担となることや、主治医との関係悪化を懸念して利用をためらう人も少なくありません。医療技術の進歩で治療の選択肢が広がる中、医療者側、患者側の双方が納得できる医療を選択する手段として認識すべきです。最近の医師は、患者がセカンドオピニオンを受けるのは患者の権利と理解していることが多いので、心配せずに紹介状を書いてもらうことが大切です。
(2015年7月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)