ゾンビ企業の増加

ゾンビ企業とは、本業の利益や配当金で借入金の支払利息をまかなえず、金融機関によるリスケや政府による資金繰り支援などで延命している企業のことを言います。利払い負担に対しどれだけ利益を稼いでいるかを示すインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)で区分します。ICRは、高いほど財務が健全で、小さくなるほど借り入れ負担が重いことを示しています。国際決済銀行は、ICRが3年以上にわたって1未満で、設立10年以上の企業をゾンビ企業と定義しています。
実質破綻状態のゾンビ企業が増えれば、経済の新陳代謝が滞り、成長産業に人や資金が回りにくくなります。本業の利益で借入金の利払いをまかなえないこのゾンビ企業が増えています。2022年度は前年度比3割増の約25万社で、11年ぶりの高水準でした。新型コロナウイルス禍に伴う政府支援で生き延びたものの、過大な債務を抱えて実質破綻状態に陥る企業が増えています。
増加の背景には、コロナ禍の緊急対応として政府が打ち出した資金支援があります。2020年春に始まった実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の利用数は約245万件に達し、約43兆円の融資を実行しました。同融資は中小企業の資金繰りを支えた半面、本来は融資を受けられないような企業を延命させたり、審査が甘くなったりします。
有利子負債は、平均で月の売上高の約10倍に膨らみ、全体平均の5.6倍を大きく上回っています。平均の自己資本比率もマイナス5.4%と債務超過の状態です。帝国データバンクによれば、従業員別の比率は5人以下が25%と最も高く、小売りや運輸・通信、製造が目立っています。

 

(2024年1月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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