ダイレクトリプログラミング

筑波大学の研究グループは、iPS細胞を使わず心臓細胞の再生につながる新しい手法を開発しました。マウスの線維芽細胞に58種類の遺伝子を導入したところ、背骨を作るのにかかわるTbx6という遺伝子を入れた場合だけ、心筋細胞が得られることが分かりました。またヒトのiPS細胞にこの遺伝子を導入しても、心筋細胞のもとになる細胞が作れました。この方法を使えば、患者の心臓にカテーテルで遺伝子を導入し、心臓にある線維芽細胞から心筋細胞を直接作り、病気を治療できる可能性が出てきます。



iPS細胞など万能細胞を使わず、患者の体内で病気の治療につながる細胞を直接作りだす技術は、ダイレクトリプログラミングと呼ばれます。iPS細胞を介さずに目的の細胞を直接作れるため、治療前の準備が簡単です。拒絶反応やがん化のリスクが低いなどの利点もあります。まだ基礎研究の段階ですが、臨床研究が近く始まるiPS細胞を使う心臓病治療に比べて簡単で安価な再生医療になる可能性があります。

(2018年8月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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