ダウン症児の移行医療支援ガイドの作成

ダウン症は、計23対ある染色体のうち21番目が通常より1本多いために起こる生まれつきの染色体異常で、500人に1人の割合で生まれるとされています。発達がゆっくりで先天性心疾患を伴うことが多く、かつては短命でしたが、医療技術の進歩により平均寿命は60歳を超えるようになっています。現在、ダウン症の人は、国内に8万人程度いると推定されています。
成人後もさまざまな疾患を抱える可能性があるため継続的な健康管理が必要とされますが、成長に伴って受診機会が減り、医療機関との関係が切れてしまう人が多くなっています。ダウン症の子どもが、成人して小児科を離れた後も適切な医療を受けられるよう支援するため、医療関係者向けのダウン症候群のある患者の移行医療支援ガイドがまとめられました。
手引きでは、主な合併症の管理が落ち着いた後、12歳ごろから小児科で移行に向けた支援を開始するのが望ましいとしています。その後は年齢に応じて段階的に、具体的にどの医療機関が移行先の候補になるかなどについて検討を進めるよう提言しています。その上で、20代のうちには成人診療科へ移行することが望ましいとしています。
18歳まで、19~40歳、41歳以上のそれぞれの時期で受けるとよい検査や受診の頻度、診療上の注意点も整理されています。ダウン症のある人を対象にした成人期の適切な診療指針が国内にこれまでなく、重要な一歩です。成人期の医療を支援する体制構築の動きがあることは、現在と将来にダウン症児を育てる人たちの安心材料になると思われます。

(2021年9月16日 産経新聞)
(吉村 やすのり)

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