ダブルケアへの支援の必要性

育児と身内の介護を同時に担うダブルケアは、晩婚・晩産や少子高齢化が進み、誰もが直面する可能性があります。内閣府の2016年の推計によれば、ダブルケアラーは全国に約25万人に上り、うち約17万人を女性が占めています。しかし、行政や地域の支援は乏しく、孤立する人は少なくありません。
ダブルケアの背景には、晩婚・晩産化のほか、平均寿命が延びていることがあります。厚生労働省によれば、2019年の女性の平均初婚年齢は29.6歳、第1子出生時の平均年齢は30.7歳で、1975年からそれぞれ5歳ほど上がっています。平均寿命は同期間で男性が9.68歳、女性は10.56歳延びており、介護は長期化しているとみられます。
担い手には働き世代が多く、育児と介護のダブルケアラーのうち30代が約2割、40代は約5割を占めています。そのため、離職するケースも目立ちます。親の介護と育児が同時に発生した人のうち、ダブルケアが要因で仕事を辞めた人は1割に達します。ケアを理由に離職が相次げば、社会的損失は大きく、キャリアを継続してもらうには、両立できる働き方を企業が積極的に示し、社員が相談しやすい環境づくりを進める必要があります。
子どもがいない場合でも、体調を崩すなどした兄弟姉妹や配偶者の世話をしながら、親の介護をするといった事態はあり得ます。多重ケアは誰でも直面する可能性があり、社会全体で課題を共有することが不可欠です。

(2023年6月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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