新型コロナウイルス禍で、テレワークなどの多様で柔軟な働き方が普及してきています。2021年はそれを定着させる年となります。多くの企業で、ジョブ型雇用の運用が始まり、生産性向上やイノベーションの果実を得るための挑戦が加速することが予想されます。
労働時間管理が厳格で、デジタル化も遅れていた日本は、永くテレワーク後進国でした。米オラクルなどの調査によれば、テレワークで生産性が上昇したと答えた人の割合は、世界平均では41%でしたが、日本は15%にとどまり11カ国中最低でした。職務内容に限定がない日本では、個々の働き手の目標設定は不明確になります。上司からの指示に依存する傾向が強く、コミュニケーションが希薄な在宅勤務になると何をやっていいか分からなくなってしまいます。
2021年は、テレワークに対応したアサインマネジメントの元年になると思われます。上司が的確に部下に仕事を割り振り、進捗を管理し、目標達成につなげるマネジメントの質の向上が求められます。目標設定が明確にできるジョブ型雇用の導入が必要になります。働き方改革で労働時間の短縮は進みましたが、限られた時間から付加価値を生み出す労働生産性は、なお先進国で最低です。少子高齢化に伴う労働力の減少も見据え、一人ひとりの働き手の働きがいと生産性を高める不断の努力が求められます。
(2021年1月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)