テレワークの拡大の必要性

労働力人口が減っていく日本では、一人ひとりの生産性向上とシニアや女性の労働参加が欠かせません。処方箋の一つが、職種によって偏りのあるテレワークの拡大です。日本はG7で労働生産性が最も低くなっています。要因の一つは、女性の労働力を十分に生かせていないことにあります。職場の支援がないため出産を機にフルタイムの正社員を諦め、低賃金の非正規雇用に転じる女性は少なくありません。販売など女性の多い職種のテレワーク化は、生産性の底上げに結びつきます。
パーソル総合研究所の調査によれば、テレワークの平均実施率は27%でした。職種別で見ると、経営企画の53%や商品開発・研究の51%などのホワイトカラー職は半数を超えていますが、製造職の4%や販売職の3%は1割に満たない状況です。テレワークを行っていない人に理由を聞いたところ、テレワークで行える業務ではないの47%が最も多くなっています。

業種別の格差も大きくなっています。情報通信業の60%が突出して高くなっています。対面サービス中心の卸売り・小売業の20%や宿泊・飲食サービス業の14%は低くなっています。従業員1万人以上の大企業は45%ですが、10~100人未満の中小零細企業は15%と大きな開きが出ています。
米アドビの日米英など7カ国の調査によれば、テレワークの方がオフィス勤務より仕事がはかどるとした人は、日本で42%に過ぎません。世界平均の69%を下回り、調査国の中で最低でした。在宅勤務で同僚とのコミュニケーションが取りにくくなったと答えた人は、米国は14%、日本は55%でした。タスクが明確な米国と、職務が限定されず、報告・連絡・相談が重視される日本との働き方の違いが影響しています。テレワークの幅と質の向上が求められています。

(2022年1月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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