デジタル人材の不足

デジタル田園都市構想達成のためには、エンジニア、データサイエンティストといったデジタル人材230万人の育成が必要だとしています。日本の労働人口6,800万人から、バックキャストによるマクロ目標の考え方で導き出されています。バックキャストとは、未来のある時点の目標から現在すべきことを逆算する手法です。6,800万人にデジタルスキルを波及させるためには、330万人のデジタル人材が要ります。現在は100万人しかおらず、足りない230万人を2026年度までに育成しなければなりません。
PWCジャパングループの調査によれば、日本はテクノロジーの進展に対して、絶えず新しいスキルを学んでいると回答した人の割合が7%と最下位です。年功序列の終身雇用の下で、長らくスキルが賃金に反映されにくく、新しいスキルを身につける意欲がわかない状態があります。
日本のデジタル政策は、構想立案のベースとすべき基本データすら乏しいまま、空回りしてみました。1985年からの官民共同プロジェクトであるシグマ計画では、システム開発の標準化を目指しました。5年間で約250億円を投じましたが、実用レベルに至りませんでした。1989年には地方のソフトウェア人材を育てる目的で地域ソフト法が施行されました。地域ソフトウェアセンターは、バブル崩壊後研修生が集まらず、相次ぎ廃止されています。これらの失敗は十分に検証されていません。
デジタル人材をめぐる省庁縦割りの政策を寄せ集めても、国民の意識変革は望めません。地に足をついた人材育成ビジョンがなければ、デジタル田園都市構想そのものが、大胆な仮説のまま消えてしまいます。

(2022年5月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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