DXを支えるデジタル人材の待遇は、日米で大きな開きがあります。30代エンジニアの年収は日本が526万円なのに対し、米国は1,238万円です。ユーザー企業のシステム開発を、元請けのシステムインテグレーターが受注して下請け、孫請けに業務を回す業界構造が格差の一因になっています。
2015年の日米調査では、日本のIT人材のうちユーザー企業などに在籍しているのは28%と、米国を大きく下回っています。元請けの管理下で実際のプログラミング作業を進めるのは2次、3次の下請けです。多重下請け構造の底辺に近づくほど、中間マージンが抜かれて低賃金に甘んじなくてはならなくなります。
米国ではセールスフォース・ドットコム、アドビなど汎用パッケージソフトの企業が多く、定型サービスを使いながら効率よくDXを進めています。多重下請け構造は発生しにくく、スキルのあるIT人材は、高給で業界を渡り歩いています。個別にシステムを作り込む受託開発型の日本では、優秀な人材は能力に応じた報酬が得られるITコンサルティング会社や外資系のユーザー企業に集まる傾向があります。
(2021年7月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)