ドクターヘリの運休の増加

 ドクターヘリは、初期治療に欠かせない医療機器や医薬品を積み、消防の要請に基づき医師や看護師を乗せて出動します。道路の混雑などに左右されず、迅速な治療や搬送が可能となります。このドクターヘリに10~11月は10都府県で運休日が発生し、対象は全国57機の2割弱の10機に上っています。ヘリに同乗する航空整備士を確保できないのが理由で、12月も一定の運休日が生じる見込みです。

 ドクターヘリは2023年度時点で全都道府県に計57機が配備され、年度中に2万9,000回以上出動しました。出動や機体は増加傾向にあります。しかし、安全運航を支える整備士の不足は深刻です。国土交通省によれば、ヘリを含む航空機の整備士は2023年時点で約6,000人です。主な養成機関である航空専門学校の2024年度入学者は約280人で、2019年度の約560人の半数に落ち込んでいます。

 国土交通省は、2030年までに整備士全体を約7,400人に増やすことを目指しています。外国人整備士向けに、国内ライセンスへの変更手続きを周知し、最長5年間就労できる特定技能1号を航空分野で保有する在留外国人についても、運行事業者などに受け入れを促す方針です。自衛隊機の整備経験者も活用します。

 ドクターヘリの運行事業者は中小企業や団体が大半で、旅客機の事業者と比べ待遇面などに差が出やすくなっています。整備士は比較的少人数で回しているところが多く、欠員による影響を受けやすくなっています。救急医療に欠かせないインフラであることを再認識し、国や自治体を含めて持続可能な体制づくりを目指すべきです。

(2025年11月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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